あいつらは本当におれを呼んでいないのか?

1日中うなっていても状態はよくならず、12月1日水曜日の朝になって嘔吐感がしてきたのでこりゃヤバいとおもい、病院へ行くことにした。頭部打撲で一番ヤバいのはこの症状である。
家のなかを少し移動するのがやっとで、およそマトモに歩けやしないので救急車を呼ぶ。


救急隊員が既往歴などの問診を行ったあと、おれにこう言った。
「鈴木さんねえ、いまさらこんなこと言っても仕方ないんだけれど、どうしてきのうのうちに病院へ行かなかったのよ? 耳から出血ってね、普通のことじゃないよ? 寝てれば治るとおもった?」
「はい」
「じゃあ、きょうはどうして? なにか急変でもあった?」
「今朝になって吐き気が強く出てきまして……」
それで会話は終わった。
救急隊員が搬送先を探す。
過去に外来で診察を受けて実に不愉快なおもいをした、近隣の総合病院へ搬送されることになった。よっぽど「ほかの病院はありませんか?」と救急隊員に尋ねようかとおもったほどだった。が、仕方なくその病院へ。


状況は救急隊員に説明してあるので、早速頭部CTスキャンとレントゲン撮影を行った。脳挫傷や頭蓋骨折などは見られなかった模様。
また、左の掌がひどく腫れ上がっているのでレントゲン撮影。結果は薬指の第二関節部分にひびが入っているとのこと。シーネを添えられ包帯を巻かれる。
おれが一番気にしている耳についてはまったく診てもらえず、質問したところ「耳鼻科に行ってみて」と言われたのみ。鼻詰まりのような左耳が塞がっているような感覚が続いているままだ。
鎮痛剤入りの点滴をしばらく受ける。さすがに少しは楽になった。
あした(12月2日木曜)に、もう一度脳外科の外来にきてくれと言われる。左手のほうも、あしたもう一度説明するが、整形外科の外来に通ってもらうことになるとおもう、だとか。
また、血液検査の結果内臓疾患はまったくないとのこと。肝臓も腎臓も健康そのものらしい。これだけ連日のように飲んでいても数字がそう言っているのならきっとそうなんだろう。トレーニングの賜物だ。
だがおれはしっかりきいていたよ。救急隊員の問診において既往歴を尋ねられたとき、おれは「うつ病で通院中です」と包み隠さず正直に答えた。病院に到着して搬入される際に、救急隊員から医師への申し送りがあるが、そこで何度も「depressionだから……」という言葉がきこえてきた。
うつ病だからなんですか? 酔って転んで階段から落ちたというのは嘘で、本当は自殺未遂じゃないのかとでもおっしゃりたいわけですか?
きこえないとおもって不用意な発言はあまりしないほうがいいですよ。
つーかさ、そんなことよりさ、
この病院、左耳の処置はなーんにもしないんですか?


受付/支払い窓口に通され、支払いを待つ。
金額を見て吃驚した。
3割負担なのに総額14,300円だって。
明細も爆笑ものだ。「手術料 14,400円」とは。
あのー、おれの左手薬指を「ずれてるから」と言いながらおもいっきり引っ張ってシーネ添えたのが「手術」ですか? 胡散臭い整体師以下なんですけど。
で、全体的にたけーよ。やっぱ救急車が発車する前に断ればよかった……。


言いたいことが言えていないからこそ、あいつらはおれを呼び寄せていないのだろうか。