妥協じゃありませんってばー

  • またもや病院をはしごする

入浴後に綿棒でいじっていたら、左耳からかさぶたのようなものが出てきた。へえ。湯気の効果だろうか。入院前にいったん外耳道はきれいにしたつもりだった。アルコールを浸した綿棒を左耳に差し入れ、丁寧に拭いた。かさぶたのように固まってこびりついた血がほんの少しこそげ落ちてきた。退院後にも試してみたがあまり変化はなかった。だからもう外耳道にはなにも残っていないとおもっていたのだ。意外。
土曜日に受けとったMRIの画像をもって△△病院へとむかった。
ごく簡単に。
顔面神経麻痺について。手術はしなくてすみそうであるとのこと。こちらの医師も口の状態はよいが目がもう少しだと言う。おれは、閉じない左目よりもむしろ右目のほうがなんとなくおかしいと伝えた。無理に閉じようとしすぎているのか、右目下瞼が引き攣っているのだ。
そういうのは次第に改善されていくもののようである。まあそうなんだろう。左右のバランスの問題なんだろうな。ともあれ手術はないということで、入院していた病院の治療方針にしたがって投薬は受けて欲しいとのことだった。そうですか。
持参したMRI画像を見ても、右側頭葉に脳挫傷があるとの所見しかないようである。ちなみに、画像の正しいむきを教えてもらった。写っているものは、仰向けになっているところを下顎のほうから輪切りにしたものらしい。画像上部が眼窩。画面左が右側頭葉。脳神経外科だと頭側から輪切りにした画像を撮ることが多いので左右が逆になるとのことだ。なるほど。
麻痺の症状が現れて2週目だというのにこの状態なら全然よいほうだと医師は言った。そう勘定するのかと内心頷きつつおれは「よかったあ」と言った。安心したのは事実である。ちなみに、手術するとしたらどこからどう開くのかと尋ねてみた。耳の後ろから開くらしい。きかなきゃよかった。想像したら痛くなってきた。外傷で出血してても痛みがないというのに変なものだ。
聴覚については来週検査したいとのこと。そして、服薬の必要ももうないようである。顔面神経管を含め中耳や内耳の部分に溜まっている血はもうほとんどないだろう、あっても組織に吸収される程度であろう、ということであった。
経過順調ということで診察を終えた。
会計の際にMRI画像を返却された。
入院していたほうの病院へ行く。きょうは、退院後はじめての整形外科外来診察の日である。
3時間ほど待ってようやく診察室に入る。
医師は包帯を切りシーネをとり外すと、軽い触診を行った。冷たい外気のなかで触れる指も冷たい。動かす指示を受けそのとおりに動かしてみる。うん、大丈夫だねと彼女は言い、手洗おうかと誘うように言った。ぜひそうしたいですとおれは答え、診察室の奥にとおされた。
ガーゼを渡され指の股などをとくに念入りに洗うように指示される。指の股どころか全体的に手がぬめっていて不快感があるのだが、まあとにかく洗った。掌の中央部にシーネの跡が白く残っていた。シーネの跡というよりもシーネが掌にあたった部分が角質化して白くなっていた。それがさらに汗に蒸れて、発酵したような甘酸っぱいにおいを漂わせていた。古くなったパンのようなにおいだなあといつもおもう。いつもってなんだよ。
洗い終えると、レントゲン撮影をしてくるように指示されファイルを渡された。放射線科に出むいて撮影をすませ、画像を受けとってまた整形外科に戻る。
さらに待って診察を受ける。レントゲン撮影の結果、骨はちゃんとついているようであった。一応安心。でもテーピングで固定して関節を動かす練習をするように命じられた。彼女はおれの左手薬指と小指のあいだにガーゼを挟み、指のつけ根から第一関節の下あたりまでをテープで巻いて固めた。さらに、2本の指の第一関節部分をまとめて別のテープで巻いた。この状態で、左手の自力で関節を曲げる練習と右手を使って押して曲げることとをあわせてやるようにということである。
その場で試してみるが、さすがにいきなりおもうようには動かなかった。彼女が自分の手を添えておれの指を押す。痛くないときかれたが、小指は押されると少し痛かった。だって見るからに腫れてるじゃないですか。こんなに膨れた指が曲がることのほうが不思議ですって。そう言ったふりをしてみると、でもね、こうして押してるうちにだんだん関節がほぐれてくるのよね、と彼女は言った。そんなもんだろうか。
受傷後どのくらいだっけと彼女が言うのであらためて教えた。3週間か、じゃああと2週間これ続けて、そのあともう一度レントゲン撮ってみましょう、今度は放射線科に予約入れておきますから、と言う。なんできょう予約入ってないのかわかりませんが、はい。2週間後って1月なん日になりますかときいたら、4日なので6日にきてと彼女は言った。まあ年始だからねえ。
診察を終え、会計をすませ、ようやく帰路につくことができた。
気が重い。

  • その他もちろんいろいろなことが

帰宅するなり着替えもそこそこに、おととい酔っ払っていた友だちにメール。そのあとテーピングを外して掌の手入れとか。軽石を使ってもあんまり削れなかった。指はもうあちこちの皮膚がぼろぼろ落ちてきて大変にぎやかな状態だ。
角質化した部分があるのにもかかわらず洗い物を片づけてみる。できますよ。安堵。生活のなかで左手を使ってだんだん慣らしていくのが文字どおりリハビリであって、楽器演奏ができるレベルまでもっていくのは一種の「トレーニング」かもしれない。脳は動きを覚えているからゼロからのトレーニングじゃないわけだが。
なんやかんやと早めに寝た。
早めに寝たが3時間程度で起きて、夜中にいろいろなことをする。ふう。
朝になってからようやくまた寝た。