チャットオペレータ

という職業は、普通アダルトサイトのあれを指すのだろう。あれだ。あれ。
おれはチャットによる占いを生業の一部としているのだが、収益はあまりよくない。ただしリピータはとても多い。まあそれなりに商品価値があると見なしてくださっているからこそ、お客さまもついてくださっているのだろう。
自分のやっていることとアダルトサイトのあれとに、どんな違いがあるのだろうかとふと自問してみたりする。
あまりないような気がする。
性の商品化とそのノウハウがいくら進んでも、まだまだ当分は「女性の性の商品化」のほうがたやすいようにおもえてならない。
"We are all prostitutes"と、ポップ・グループ時代のマーク・スチュワートは歌った。労働の対価として賃金を得ている者はみな搾取される売春婦であり……
まあそんな話はおいといて。
チャットとはとてもおもしろいもので、話し言葉と書き言葉の中間を表現しうる場であると個人的にはかんがえている。さまざまな文学的実験が成果を挙げることができなかったこの表現を、インターネットがもたらしたチャットという文化は、いとも簡単に実現してしまったのだ。
書物は読まれなければ書物にならない。文は読まれてこそ文となる。
そして発話である。フォネーの優位は……
という話もおいといて。
おれはネットで知りあった人物に実際に会って話すと、ほぼ例外なく言われる。
「チャットでの印象と口調や声の感じが一致している」
と。
おれは自他ともに認める美声のもち主である。
態度は尊大だ。
体躯は矮小だ。
という話もおいといて。
早川義夫が活動を再開して10年になる。
当時仄聞したところによると、また歌いはじめたきっかけは「恋をしたから」だそうだ。
発表したシングルのタイトルも「君のために」である。きわめてわかりやすい。歌詞だってド真ん中に投げている直球のラブソングである。
あのときのおれには、早川の動機が理解できなかった。
いまは、ほんの少しだけわかる気がする。


幸か不幸か、おれは弦楽器演奏を得意としている。