世事から逃げたいがゆえに眠るのか

11時10分ごろ起きる。いやよく寝た。ゆうべ「M-1グランプリ2004」を見終わってからすぐに寝たのだから14時間ほどか。しかも途中目覚めてトイレ立ちするなどの中断がない。
目覚めに鏡の前で百面相してみると、なんと左下瞼がもちあがった。おお! ちょっと苦しげなしかめっ面の様相を呈しているが、右目はしっかりと開いており、ちゃんと左目だけが閉じている。上瞼を動かす筋肉(上眼瞼挙筋)は動眼神経が司るものであって顔面神経の支配下ではないので以前から左上瞼はなんとか閉じることができていたのだが、鏡に映った歪なしかめっ面は、しっかりと左下瞼がもちあがっていた。
どうにかひと山越えたようである。
口はほとんど見た目では問題ないように感じられる。しかし、おれとしては動きに違和感があるのだ。左がうまく動いていないような、両側ともこわばっているような、左右で違いがあるような、そうした微妙な差異だ。左目が閉じない状態でしばらくすごしてきたゆえに、意識的に目を閉じようとするあまり右目を閉じるのに無駄な力が入りすぎていたのがここしばらくである。ろくに左目が閉じていないのにも関わらず、右目だけはやたらと力いっぱい閉じてしまうという按配だ。閉じるというよりも、右上瞼と下瞼に力を入れてぐっと皺を寄せ、右眼球を上から圧迫しているようだと表現するのが適切かも知れない。おかげさまでいまのおれは右目が若干見えにくい。過度に力が込められた瞼で眼球が圧迫されたためであるとおもわれる。したがって、今回顔面神経麻痺の症状を起こして下瞼が閉じなくなっために乾き気味となり、かすみ目の症状さえ現れていた左目よりも、右目の視力が衰えているような気がする。あくまでも体感上であるが。
怪我をそれが負い回復するにつれて、みずからの身体の諸機能をどのように「脳の記憶」と照合しつつ身体性を構築し直すか――これはおしなべてあらゆる人にとって興味深いテーマであるとおもうのだが、このように音楽家・弦楽器奏者の怪我からの回復例は、いくばくかは興味深い題材となるのではなかろうか(自負20%)。
ともあれ、体のあちこちに怪我を負った今回の件において、ひとつの区切りとなった出来事であった。