炭坑の町美唄発の人気焼きそば
ネットのニュースで見たおかしな記事。
雑記帳:そのまま食べる焼きそば大人気 北海道美唄 北海道美唄市の製めん会社「角屋」の「やきそば」が人気だ。先週、テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で紹介されると、1日当たり100〜200食だった売り上げが4000食にもなり、パート従業員を増員して対応している。 特製ソースをからめた200グラムの焼きそばに紅ショウガを添えただけ。そのままでもOKだが、温め直し具材を加えるとおいしくなり、昔は炭鉱マンに人気だった。 売り上げが伸びず一時姿を消したが、懐かしむ声に高橋幹夫社長(46)が数年前に復活。現在はネット注文も多く、テレビで火がついた形だが、焼きそばだけに「熱いうちにどうぞ」。【吉田競】 毎日新聞 2009年6月27日 1時17分(最終更新 6月27日 4時03分)
「そのまま」の意味が皆目わからない。そのまま食べない焼きそばなど一体全体どこにあると言うのか。
後輩編集者にメール。記事の引用を貼りつけ、
問 供されたものをそのままいただかない料理とはほかにどのようなものがあるか答えよ。
と質問してみた。返ってきたのは
えーと
鶏飯。納豆ご飯。卵かけご飯。ビビンバ。
である。発想の違いがおもしろい。おれならまず鍋料理を挙げる。
ところで、この吉田競という輩がなにを訴えたいのか、おれにはさっぱりわからない。いくら忖度してもわからない。「角屋」の「やきそば」というものについて調べてみる。
同社のサイトトップページ下部には大きく「袋入り!! 味付きゆで焼きそば」とある。
メーカーサイトで商品の特長がこんなに明確に示されているものを、新聞でとり上げる際にどうして正しく紹介できないのか、おれは不思議で仕方ない。記事にすることによってメーカーサイトの記載よりもわかりにくくなるのならば、メーカーにとって新聞にとり上げられることはまったく利益をもたらさない。むしろとり上げられることによって不利益をこうむっていると言える。新聞記事が公益性を欠くティピカルな例だ。吉田競は新聞記者としての技量や資質を大きく欠いているとしか言いようがない。
記事を書き直してやる。珍妙な見出しを生かすように、2段落めだけ差し替えた。
雑記帳:そのまま食べる焼きそば大人気 北海道美唄 北海道美唄市の製めん会社「角屋」の「やきそば」が人気だ。先週、テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で紹介されると、1日当たり100〜200食だった売り上げが4000食にもなり、パート従業員を増員して対応している。 ゆでた中華めんに味をつけ紅ショウガを添えたもの。時間のない美唄の炭坑夫の空腹を満たすためそのまま食べられるように考案されたが、炒めてもおいしいと評判だ。 売り上げが伸びず一時姿を消したが、懐かしむ声に高橋幹夫社長(46)が数年前に復活。現在はネット注文も多く、テレビで火がついた形だが、焼きそばだけに「熱いうちにどうぞ」。【吉田競 補訂:すずきふみよし】
期せずしてまったく同じ文字数で収まった*1。また、美唄は炭坑で栄えたところであるのだから、「炭鉱マン」などといういかがわしい言葉を用いず「炭坑夫」と記すべきである。炭坑を炭鉱と間違うお粗末さもさることながら、「マン」をつけて呼称することで炭坑労働に関する負のイメージ――貧困、危険、労働運動などを覆い隠そうという見え透いた下心が実に姑息だ。これをいかがわしいと言わずしてなんと言うのだ。
さて、さらにおかしなことに、元記事のあとに2009年6月27日1時26分づけでこれを書き直したものと見られる記事がある。
雑記帳:「角屋のやきそば」が人気 美唄市 ◇美唄市の製めん会社「角屋」の「やきそば」が人気だ。先週、テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で紹介されると、1日当たり100〜200食だった売り上げが4000食にもなり、パート従業員を増員して対応している。 ◇特製ソースをからめた200グラムの焼きそば紅ショウガを添えただけ。そのままでもOKだが、温め直し具材を加えるとおいしくなり、昔は炭鉱マンに人気だった。 ◇売り上げが伸びず一時姿を消したが、懐かしむ声に高橋幹夫社長(46)が数年前に復活。現在はネット注文も多く、テレビで火がついた形だが、焼きそばだけに「熱いうちにどうぞ」。【吉田競】 毎日新聞 2009年6月27日 1時26分
なぜわざわざ見出しを変えているのだろうか。北海道の地域ニュースとして再掲する際に、地元企業の商品名を強調するという意図でもあったのだろうか*2。しかし記事本文から「北海道」を削除する作業において「200グラムの焼きそばに」の「に」も削除してしまうのはどうしたことか*3。スタッフの作業能力にも疑問を感じる。
肝心の角屋の焼きそばについてだが、機会があれば口にしたいところだ。東洋水産は北海道限定で「焼きそば弁当」という商品を発売しているが、北海道には独特の焼きそば文化が存在しているのかもしれない。